= アニキと最初の大冒険(旅情編) =

 インターネット・オークションでの取引はスピーディーである。落札はボタン一つ。ほんの0.5秒幽体離脱しただけで商談は成立した。代金の支払いは銀行振り込みで片づけられる。ただ厄介なのは落札したブツのダウンロードである。物が物だけに切手を貼って郵送というわけにはいかず、車を運ぶ車、車載車(セルフローダー)をレンタカーで借りていき、アニキを乗せて帰ってくることにした。

  アニキ上京の当日は朝から雨が降り止まず、同行を依頼した友人のF氏を迎えに行く246の上り線は朝のラッシュも相まってかなり混雑していた。結局レンタカーを借りて東名の横浜町田で乗ったのは正午少し前だった。目的地は和歌山県北部。奈良県の天理から少し南下した県境付近。東名で名古屋まで行き、名古屋高速を介して東名阪自動車道へ、終点の亀山から名阪国道とよばれる高速並みに整備された国道で天理まで行き、その後は下の道で目的地へ目指す。

 道中、東名は比較的空いていたが雨はやむことがなかった。雨足は途中ある程度弱まったが、浜松過ぎたあたりから、いよいよ雨足が強くなり、名古屋付近ではひどい雨で速度が出せず渋滞にも巻かれる。名古屋インターでおり東名阪に乗るために走った名古屋高速では、激しく降りつける雨で視界がほぼゼロ。東名阪のあるインターでは路肩がゆるんで小さな地滑りが起き、閉鎖されているところもあった。前のオーナーさんに雨と渋滞により遅れる旨を伝えると、和歌山は大雨警報がでているという。そんな状況にたじろぐことなく逆にはしゃいだ馬鹿二人、大自然の猛威に胸を躍らせ和歌山を目指す。

 予定の3時を7時間ばかり過ぎた午後10時過ぎ、ようやくオーナーさんが経営する店に到着。そこにはオーナーさんの他に、もう一人強力な助っ人に来ていただいていた。ということはお二人を最低でも7時間は待たせてしまったのだろうか・・・?そこからさらにアニキの待つオーナーさん宅へと向かう。それまでの道がまたすごかった。民家の軒や樋が容赦なく迫り、それを避けようと逆サイに振ると、1mくらい下の田んぼかさらに下の小川が手をこまねいて待っているという恐ろしいスラローム。道幅もワイドロングのトラックがぎりぎり走れるくらいで、雨の夜というスチエーションも相まって、まるで荒手の絶叫アトラクション。そこへきて対向車までやって来てくるから、まさにスーパーマリオの世界。そんな我らがマリオカートを操縦するのはもちろん僕ではなくF氏。

 決死の思いでオーナー宅に何とか到達したころには、雨足は弱まり小雨程度になっていた。バックで車を入れるも、肝心のアニキはトラックの荷台と垂直に鎮座している。ここからがアクロバチック。ウィンチから垂らしたフックを、素人目にも通しちゃいけないと思われるところを通し、そこを支点に荷台の入口まで引っぱり出す。あとは4人で力を合わせてうちのアニキをだっこして、90度向きを変えて荷台と水平にする。最後にウィンチで荷台に引っ張り上げて、はい出来上がり。30分かけて何とかアニキは荷台に収まった。ホントお世話になりました。

 

 
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